失敗しない墓地 町田
クラスタ分析によって、事前解析を行うと、クルマの外観に関する総合評価は、四車種ともにパーソナリティにおいて、年齢と年収が低いグループと、高いグループに層別することが判った。
図5は年齢と年収が低いグループに特定したある車種の解析結果の一例である。
ここでわかることは、外観の総合評価への影響度をあらわす自由度調整済みの寄与率(R・2)が0・七四となっており因果関係は充分大きいと判断できる。
その内訳を見ると、フロントピュ-の影響がBfvH0・四六とかなり高くサイドビュ-、リヤビューもそれぞれBSVH0・三O、BrvH0・二九とかなり影響していることがわかる。
さらに解析Hでは、フロントピューへの影響度はヘッドライト、フロントグリルが高く、サイドビュ-については、サイド全体の輪郭デザインが、リヤビューはテールランプやリヤパンパ-のデザインが高いことがわかる。
また、年齢と年収の高いグループでは、フロントビューへの影響がさらに高くなっていることもわかった。
解析Hの結果は年齢と年収が低いグループの分析結果と類似しているものの、フロントビューではポンネットの影響が大きいこと、サイドビューではリヤからトランクへのラインと、リヤ全体のデザインバランスが高いことなどによって、幅広くクルマの外観を評価していることが確認できた。
こうした解析傾向は他の三車種でも同じであった。
面白いことに、同じ調査と分析を北米でも行ってみたところ、日本では一般にフロントビュ-のウエイトが高いのに比較して、北米ではサイドピュ-のウエイトがフロントピューと同等であることがわかった(悶捕捉2)。
こうしたことからデ、ザイナ-は、向け先の同柄を考えにいれてカスタマ-インのデザイン戦略が必要であることも掌提てきたのだった。
第三ステップは、第一、第二のステップにも噌して、Tのデザインチームのユニークな発想が示されたものである。
狙いは非常に現実的で「将来、どのようなプロポーションをしたクルマが売れるか?」を予測するもの。
手法として、ユーザーが自動車という商品そなぜ買うのか?という基本に立ち返って考えてみると「払った金額に見合うから買う」ということと「いま持っているものより新しくなっているから買う」というこつの要因を挙げることができる。
そこでこの二つの要因を「高級感H値段」「新しきH発表年代」と仮定し、それらの要素とクルマのプロポーション(比率一フ-ド長/全長、トランク長/全長:::)というような対応関係を解析していった。
これらはあくまで、実際の長きではなく長さの比率であるところに注目してほしい。
長屋たちは内外のセダン系乗用車を実に六三車種を選んで、プロポーション(比率)を測定して、主成分分析によって、6の散布図(主成分得点)をつくった。
「ポイントは絶対的な寸法ではなくて、あくまで比率に重点をおいて調べていることなんです。
九つの比率の数字ですが、すべて全長に対する長さの比として把握しています」その九つの比率とはこのようなものである。
そして、高級の度合い別と発表年代別にそれぞれのデ-タ守層別分類をして散布図をつくってみると(図611および612)、散布図6では右の方ほど高級等級が低くなり、散布部では右の方ほど発表年が新しいということがわかったのだ。
ということは、この二つの図を重ねて考えてみると、アリストの開発スタート時に、トップダウンの指令として示された「最高に高級で、最高に新しいものぞ」という命題を満足させるデザインは、実現凶難であるということになる。
このステップ三の定量的な分析研究によって「高級」と「新鮮さ」とは背反することがわかったわけだが、これは長いTの開発の.聡史のなかでも、これまで知られていなかった事実であった。
解析のなかに「新しき」という、顧存の晴好が時間軸上Jて変化するという概念を合む喪主を取り込むことによって、現在のユーザーの好みではなく、将米のユーザーの好みを4J測することができたということになる。
「お容さまが欲しいと思う前に、欲しいものを提案する」ことはどうすればできるのだろうか。
それはデザイン部門だけでなく、自動車を開発する人間すべてに共通する大きな課阻である。
そしてデザイナーたちはそれを・実現するとともに、デザイン業務のプロセスを改苦する指針を求めて『デザインSQC』という方法を選択した。
これは、ただアリストのために行ったことではない。
だが、結果はアリストのフルモデルチェンジに対して与えられたトップの指令『高級でしかも新鮮』という臨時起をも、人日明性をもって解決することができたと、開発責任者のN泰をしていわしめるところまで王成したデザインになった。
Tの新しいデザイニング活動の一端を示したものといえるだろう。
『アリスト』が生まれ変わった。
長屋たちが新しいデザイン手法を模索したのは、新しいアリストの開発を前提にしていたことはいうまでもない。
ここで、アリストというクルマの概要を記しておく必要がある。
先代アリストすなわち初代のアリストは、一九九一年秋に、クラウンの派生車という住置づけて誕生した。
クラウンは、いうまでもなくTの乗用車の歴史ともに歩んできた伝統的なセダンである。
公用車、裕福な家庭のための自家用車として、経済成長期、安定成長期に堅実な発展を示してきたクルマである。
きっとだれでも「いつかはクラウン」という名コピーを記憶しているだろう。
たしかに重厚で静粛で、落着きのある高級車ではあるが、そこにはスポーティ芯味わいというものが欠けていた。
そこで、クラウンをべ-スにしながらも、よりパワフルなエンジンを積み、デザインもクラウンとはまったく異なるものとして登場したのだった。
バブルの真っ盛り。
自動車の世界もまさにバブル景気に踊らされた時代であった。
急激な需要に応えるべく、各メーカーは果てしないパワ-競争と豪華装備を競いあった。
N自動車が高級車の極めつきとして発表したシ-マが、予測をはるかに上回る爆発的な売れ行きを一不し「シ-マ現象」ということばが流行語になった時代である。
アリストの場合、クラウンのバリエーションとはいえ、デザインは世界的な名声を誇るイタリアのジウジア-ロに委ねて新鮮さを主張した。
フロア川りをクラウンと共通にしながら、三リッターエンジンにツインターボを備えて、強烈な走りを主張したクルマとしてのデビューであった。
生産量はそれほど大きいものではなかったが、景気が右肩上がりを続けている時期にはそれに呼応するように、エンジン出力も、そして高級車なりの価格も世の中から受け入れられていた。
が、いったんバブルが弾け世の中を襲うと自動車に対する購買力はあっという間に失速した。
とりわけ、高級なセダンや高い性能を誇るスポーツカ-といった車種は悲惨であった。
アリストの場合も例外ではなく売れ行きも激減したうえに、買い手や販売店からは、多くの批判が吹き出してきた。
パワーは充分過まるほどある。
しかし、燃費が志すぎるとか、大型セダンの割りにはトランクが狭いとか、ボディが大きくて取り回しがよくないといった指摘てある。
たしかに、それらは個別には当たっている指頭しあるが、アリストが市場で人気を失った本質的な問題、ではない。
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